それぞれの思い

WEB拍手

 

ストリートのショーから3日後。

「あ、仁科くん!」
カヅキの家の前で、なまえは今まさに外に出て行こうとするカヅキを慌てて呼び止めた。
「ん?ああ、なまえか!」
「よかった。出ていく前で…これ、お父さんに渡されたの。仁科くんのお父さんに渡してだって」
「あー、塗装関係のカタログかな?そういや、確かみょうじさんとこが持ってきてくれるって言ってたな」
袋に入った少し重みのあるそれを、カヅキは重さなど感じさせない軽快さで受け取り、サンキュな、と微笑む。
「ううん。ごめんね、どこか行くとこだったんだよね?」
「あーいや、別にまだ時間はあるからーー」
話しながら、カヅキははっと思い出す。
脳裏に浮かぶ、三日前のストリートのショーの後の、ヒロの怪しげな笑顔と、それを見守るコウジの顔。

 

ーーじゃあそういうわけで、カヅキ。今度なまえちゃんに会ったら、色々出来る限り聞き出しておくんだよ。
ーーお、おい?!聞き出すってなんだよ?!
ーー不自然にならない程度に、さりげな〜く、タイガのことどう思ってるかとか、彼氏欲しそうかとか、今後の見込みはありそうかとか、そういうことを、さ!
ーーはああ?!そっそんなことどうやったらさりげなく出来んだよ…無理だろ!
ーーそこはそれ、Over The Rainbowの仁科カヅキの腕の見せ所ってやつさ!
ーーいや関係ねえだろ!何言って…!
ーーまあ、ひとまずカヅキしかいないからね、今なまえちゃんに接触できるの…
ーーんな、コウジまで…!
ーー「「任せたよ、カヅキ!!」」
ーー見事にハモるんじゃねえ…!

 

 

「……そうだった」
最後まで抵抗したものの、結局ヒロとコウジに言いくるめられてしまったあの時のことを思い出し、カヅキは額を押さえた。
「仁科くん?」
「あ…あーいや。そのな…えーっと」
「うん?」
「あー、なんだ、その…タ、タイガ…のことなんだが」
我ながら全くかけらも自然さが感じられない、と思いながらも、カヅキは必死に続ける。仕方がない。これも後輩のためだ。
「タイガくん?」
「あ、ああ。いや、前二人で来てくれただろ?仲良いんだなって思ってな」
「んー、そうだね。最近、ちょこちょこ会うかも」
「そ、そうか…」
「うん。それがどうかしたの?」
「え?!あー、い、いや。あいつ、迷惑かけてないかなって思って」
「迷惑?全然だよ」
「あ、ああ、それならいいんだけど」
「…どうして?タイガくんに何かあったの?」
首を傾げるなまえに、不自然な運びだったかとカヅキは慌てて手を顔の前で振り、誤魔化した。
「い、いや!そうじゃなくて…単に、その、ほら、タイガは俺の後輩だろ?それに、お前も受験控えてるから…だからまあ、先輩としての責任じゃないけど、一応確認しておかねーとなって思ってな」
「ふうん?そういうものなの?……とにかく、全然迷惑なんかじゃないよ、タイガくん優しいしすごく気配りしてくれるし…、寧ろ私が迷惑かけてるくらいかも」
「や、それはない」
「え?」
即答した後、しまった、とカヅキは口を押さえる。
「あ、あーいや。お前が迷惑かけるなんてことはないだろ、その、別に…タイガに限らず、な」
「…?そ、そんなことないと思うけど」
買い被りだよ、と不思議そうな顔をするなまえに、カヅキは慌てて話を変えようする。
「あーいや、そ、そういえば…なまえは、受験勉強の方はどうなんだ?確か試験、2月だったよな」
「え?まぁ、ぼちぼち…って感じかな。一応模試ではそれなりになってきたとこ」
「そっか。まあ、なまえなら大丈夫だと思うけど。昔から優秀だしな」
「仁科くんにそう言われると照れるなあ。…まあ、頑張ってるよ、なんとか。ちょっと落ち込んでた時もあったけど、タイガくんが励ましてくれたし」
あはは、と照れた様子で髪の毛をとくなまえに、カヅキはそうなのか、と少し驚いた声を上げた。
「…そんな話までしてんだな」
「え?何が?」
「あ、あーいや。えーっと」
カヅキは頭をかき、視線をそらす。
つくづく、自分にはこういう話は向いていない。
「タイガも、いいことするなあって感心してな」
「うん。優しいよね、タイガくん」
「ああ。真面目だしな、あいつ」
一通りタイガを褒めあった後、ゴホン、とカヅキはわざとらしく咳をする。
「あー、そのー、変なこと、聞くけどよ」
「ん?」
「なまえって、今、か、彼氏…とかいたりしない、よな?」
「彼氏??」
なまえが目を丸くしてカヅキを見る。いたたまれなくなり、思わずカヅキは再び目を逸らした。確かに、自分が言うような台詞ではないだろう。
「どうしたの、突然」
「あ、あーいやほらその、俺たちももうすぐ大学生だろ?最近親がそういう話を振ってくるんだよ、はは…。なまえのとこはそういうこと聞かれねーのかなって思って」
「…ふぅん?うちはあんまりそういう話はしないかなあ…」
「あー、そ、そうなんだな。そうだよな、うん」
「彼氏もいないよ。今は受験でそれどころじゃないし…」
「ま、まあそうだよな」
「それに私、ずっと女子校だし、あんまり男の子の知り合いいないから…。あ、でも、だからタイガくんとかカケルくんと話すのは新鮮で楽しいよ。この前も二人と一緒にパスタ食べたんだけど、そのときの二人の話が面白くてね」
「…へー、そうなのか…あいつらと」
カヅキは頷きながらも、再び少し驚いていた。なまえとタイガ・カケルが知り合ったのは自分がきっかけではあるが、まさか知らない間に、そんなにタイガ達と会っていたとは知らなかったのだ。
(…正直、まだ半信半疑だったけど…これはマジで、好きなのかもな…あいつ)
タイガの顔を思い浮かべ、カヅキは自分のことではないのにどうにも気恥ずかしい気持ちに包まれた。やはりこの手の話にはどうにも慣れることができない。
(ま、でも…あいつが本気でそのつもりなら、俺たちも全力で応援してやんねーとな……バーニン!)
つい、ぐっ、と拳を握り、ガッツポーズのような仕草をすると、なまえがおかしそうに目をぱちぱちと瞬かせた。
「あ、いや…お、お互い頑張ろうな!受験!」
「ああ。うん!」
なまえは合点がいったとばかりに、同じくガッツポーズを作る。何とか誤魔化せたか、とカヅキはほっと息をついた。
「あーあとそれと…タイガ、あいつお前に遊んでもらえて嬉しそうにしてるから…よければ受験の邪魔にならない程度に、またたまに相手してやってくれ」
もちろん無理なときはいいけど、とカヅキが言うと、なまえはきょとんと目を丸くした。
「あはは、なにそれ仁科くん。タイガくん子どもじゃないんだから」
「え?!あ、あーいやそういう意味じゃなくてーー…まぁ、いいか。でもほんと、あいつ楽しそうだから、よ」
「そっか。うん。…だったら私も嬉しいな」
「ああ」
「…ところで仁科くん、時間は大丈夫なの?」
「ん?ーーうおっ!そうだった。これからオバレで打ち合わせが…!」
腕時計を見、カヅキは慌てて、なまえから引き取った荷物を玄関の上がりたての所に置く。そしてドアを閉め、鍵を再びかけた。
「ごめんね、引き止めて。じゃあ、また」
「おう!また、いつでも来いよ!」

なまえに軽く手を振り、少し駆け足気味にヒロのアパートへと向かう。なまえに今しがた会ったことを言えば、すぐさま二人に問い詰められることだろう。そうなったときに二人に報告しなければならない事項をいくつか頭の中で整理しながら、カヅキは微かに口角を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、タイガはエーデルローズ寮の食堂に座り、テーブルになだれ込むように突っ伏していた。
紅茶を手に持ちながらその右斜め前に腰かけたカケルが、おやおや、と声をかける。

「ヤンキー、姿勢悪いよ〜ん。どうしちゃったの?」
「…別に」
カケルは首をかしげる。オバレの3人から、あのストリートのショーになまえさんと二人で行くことに成功したと聞いていたがーー喜びこそすれ、なぜこんなにもテンションが低いのか。
「この前なまえさんとカヅキさんのショー見に行ったんでしょ?よかったじゃ〜ん」
つんつん、と肘でタイガを押してみるが、反応がいまいち鈍い。怒るわけでもないのがまた不気味だ。
「タイガきゅん?」
「…ぎの」
「へ?」
「次の予定が、何にも、思いつかねえ」
低い声で呟きながら、ギギギと首をあげる。
「次の予定?」
「…っ、だから、なまえさんと……その、会う…、テキトーな用事だよ」
「え?あ、あー…そういうことねん」
カケルはなるほどー、と言いながら指をパチンと鳴らす。
「なまえさんを誘う口実がないって訳だ」
「…まあ…簡単に言えば」
小さな声で、髪の毛をわしわしと誤魔化すように乱しながらタイガが呟く。
「え〜、そんなの、会いたい!でいーじゃん?」
「はああ?!そんなチャれえこと言えっか!!」
「…いや〜結果的に同じことだと思うんだけどね?」
真っ赤になったタイガを見ながら、ま、タイガきゅんが言えないタイプなのは分かるけどー、とカケルは付け加え、テーブルに肘をつき、手のひらに顎を乗せる。
「口実かぁ…確かにねぇ。ってゆーか、なまえさん今年受験でしょ?そろそろしばらく会えなくなるんじゃない?」
「えっ…」
タイガが、考えたこともなかったと言わんばかりの表情で慌ててカケルを振り返る。
「…大学受験ってそんなに勉強するもんなのか?」
その発言に、テーブルについていたカケルの肘が、ずるっとコントのように滑った。
「そりゃあするよ〜!まあ人によるけどさ。なまえさんって確か最難関の女子大目指してるんでしょ?だったらこの時期だって普通は塾と自宅と学校以外歩かなくてもおかしくない感じだと思うよん?」
「…マジか…」
「まー、なまえさん優秀らしいし、普通の受験生よりは余裕あるのかもだけど」
「…じゃあ、この間のやつも…」
つい誘ってショーに連れて行ってしまったが、本当はそれどころではなかったのではないか。タイガは青ざめ、文字通り頭を抱えた。
「ん?まーそれはいいんじゃない?ダメだったら本人がそう言うでしょ」
「…そうか」
少し安心したように、タイガは息をつく。
「まぁ、ひとまず、受験終わるまでは連絡だけちょこちょことってー、終わったらアタック再開って感じかにゃ〜?」
「…わかった」
どこか残念そうに、タイガがスマショを握って見つめる。当初に比べれば、ずいぶん素直になってきたものだ、と、カケルは紅茶を飲みながらその様子を見ていた。
「…なまえさんに会えなくて寂しいのはわかるけど、時には引くのも大事よ、ヤンキー」
「は、はあ?!わ、わーってるよ」
「ならいーけど」
(寂しい、は否定しないのね〜)
カケルはそんなことを思いながら、ミナトの淹れてくれた紅茶に更に砂糖を少し足し、かき混ぜる。
カチャカチャとティースプーンとカップの当たる金属音だけが響いた。
そんな中、ふっとタイガが口を開く。
「…それだけじゃねーんだよ」
「え?」
カケルは紅茶をかき混ぜ終え、味を確かめながら、むっとしながらも頬を染めるタイガを見遣る。
「…なまえさん、この前、カヅキさんのことは別に、その…そういう風に好きじゃねえって言ってたけど」
「あ、そーなんだ!よかったじゃ〜ん」
まあそうだろうとは思ってたけどね、と内心思いながらカケルは笑顔を見せる。
「でも!」
タイガがバン、と手のひらでテーブルを叩く。カケルは慌てて零れそうになった紅茶のカップを両手で押さえた。
「カヅキさんじゃねえけど、気になるやつは、その、いるって……」
語尾に近付くにつれ小声になっていくタイガのその言葉に、カケルは目を丸くした。
「え。そーなの?」
「気になるっつーか、好きなの…かも…って……」
赤くなっていたタイガの顔が、白いを通り越して青ざめてきた。
「え〜…なまえさんが、ねえ?」
ふーん、とカケルは再び肘をつき直して考える。
(…てゆーか、それってタイガきゅんのことなんじゃないの?)
なまえとは長い付き合いではないが、男の影があるような感じでもなく、まして嘘をつけるような性格でもないのは確かだ。その上あの天性の人たらし・仁科カヅキをも特に好きではないというーーそんななまえが「気になる」男性といったら、それはもうタイガしかないのではないかーー
そうふっと考えたが、当の本人は「誰なんだよ…くそっ」と言いながらイライラした様子を隠そうともせず、髪の毛をワシワシとかき回している。
どんな文脈で、どんな会話の流れでなまえがそう言ったのか分からない以上は推測でしかないが、カケルはあまり心配していなかった。こういう時の自分の推測に自信を持っているからだ。
「…カヅキさんならまだ仕方ねえって思うけどよ…、カヅキさんが近くにいてそこには惚れなくて他の男が気になるって、そいつどんなすごい奴なんだよ?!」
もう黒川冷さんしか思いつかねえ、けど面識ねえはずだし、と頭を抱えるタイガ。あまりに明後日の方向を向いており、カケルは古典的に、飲みかけていた紅茶をぶっと噴き出した。
「いやストリートの基準で考えてどーすんの!?ったくも〜。女の子は強い順に惚れるわけじゃないんだからさぁ」
「う…、いやっでも…お、女の視点で見てもカヅキさん以上のやつなんてそうそういねーだろ?!ヒロさんとコウジさんはまだしも…だけど、この前初めて会ったっつってたから二人もちげーし…」
ブツブツと不毛な思い人探しをするタイガだが、それおそらくタイガきゅん自身だよーーとは言わず、カケルは黙っておくことにした。あくまでこれは推測、間違っていたらタイガにとってあまりに辛いことになる。それにーー
(……ま、こーゆーことは自分で気付かなきゃねん。ヒントまではあげられるけど♪)
ハンカチで口を拭いながら、カケルは微笑む。
「まぁこれは俺っちの勘だけど、たぶんだいじょーぶだよ、タイガきゅん」
「はあ?!な、なんでだよ」
「そこはあんまり気にせずガンガン押しちゃった方がいいと思うよん」
ウインクをするカケルに、タイガは躊躇するように視線を下に向けた。
「…いや、でも」
「だってさ。えーと、じゃあ仮に、なまえさんが大和アレクサンダーが好きだとして」
「はああ?!あんなやつなまえさんが好きになるわけねーだろ!ふざけんな!」
タイガが思わず立ち上がり、椅子がガタンと揺れる。カケルは至って冷静に返す。
「うん、あのーあくまで例えね?…で、そうだとしてもよ?タイガきゅんはじゃあはい無理です諦めました、ってなるわけ?」
「ならねえよ!大和アレクサンダーをぶっ潰す!」
完全にショーのバトルモードに入ったタイガの目を見て、カケルは眼鏡をくいっとあげた。
「…うん、俺っち今例えの選択ミスったな〜って思ってるとこ」
「あ?」
「まあとにかく、誰かいるから諦めるわけじゃないならー、…やることは同じでしょ?」
「……まあ」
カケルの言わんとすることは分かったのか、タイガが落ち着きを徐々に取り戻し、おずおずと椅子に座りなおす。
「…そう…だよな。確かに…。それに、今思い返すと、なまえさん、気になるけど脈はなさそうって言ってたし」
「ふーん……ん?!そ、そんなこと言ってたの?!なまえさんが?!」
「え?んだよ急に。あー、言ってたけど…たぶん脈はないって」
「…寧ろそっちの方が問題じゃないのコレ」
「は?」
カケルの推測が正しければ、なまえの「気になる人」とはタイガのことであり、それに関して脈がない、となまえが言うのであれば、それはタイガの好意が全くなまえに伝わっていない、ということになる。
(う〜ん、確かにタイガきゅん不器用だけどにゃ〜、割とあからさまなとこはあからさまに反応してると思うんだけど)
腕を組みながら、ちらりとタイガを見る。
「…にしても、なんだよその男。なまえさんが気になってんのに好きにならねえってどういうことだ、くそっ」
好きになられても困るけどよ…とブツブツ呟くタイガを尻目に、カケルはこめかみを押さえた。
(…んー、もしかしたら割とややこしいことになっちゃってたりする?これ…)
「…あのさタイガきゅん」
「あ?」
「もう告白したら?」
なんだか面倒くさくなってきて、カケルはズバリとタイガに結論を出した。
なにやら絡まり出した糸をいちいちほぐして編み直すより、いっそ全て上から塗り直した方がいいのではないか。
今告白しても、勝算はかなりあると踏んでいたカケルは、笑顔で眼鏡のつるを掌で持ち上げた。
「はっ、はあ?!や、そ、それは…だから。まだ早いだろ…なまえさん気になるやついんだし…」
急に声が小さくなりごにょごにょと誤魔化すタイガを見て笑いながら、カケルは天井を仰ぎ見る。
「んも〜。タイガきゅんてば本当奥手だなー!」
「うっ…うるせえ!!つーかさっきおめー、引くのも大事っつってただろ!」
「その時と今は条件が違ってきてるんだもーん。までも、確かに受験後でいっか告白は。なまえさんが落ち着いてからの方がいいよねー、少なくとも4月過ぎてからかにゃ〜」
「おい!勝手に予定決めてんじゃねえよ!」
「もーちょうどいいしタイガきゅん自分の誕生日に告っちゃえば〜?」
「おっ…お前だんだん投げやりになってきてんだろ…!」

タイガとカケルが食堂でわぁわぁとやりあっていると、ドアからひょこっとミナトが顔を覗かせる。

「ああ、二人ともいたんだ。ちょうどよかった、今日はちょっと多めに買い出し行きたいから、付き合ってくれる?」
「おっけ〜☆」
「っす」
二人はすぐに返答し、立ち上がる。
タイガはスマショをポケットに仕舞いこみ、カケルはエコバッグを手慣れた手つきで棚から探り出す。
買い出し行くときは必ずこれを持っていくんだよ、とエーデルローズスタァ候補生たちはミナトからきっちり教え込まれているのだった。
「そういえばお腹すいてきた〜。ミナトっち、今日のメニューは?」
「うーん、それは内緒。出来上がってのお楽しみ、かな」
「お、焦らすね〜。ってことは、新メニューとみた」
「さあ、どうかな?」
「…俺、肉がいいっす」
「お肉はお肉だよ。何のお肉かは、食べて当ててみてね」
「わぁお。俺っち肉にはうるさいよん♪」
「それは腕がなるなあ」

 

三人は、たわいもない話をしながら寮を出る。
ちょうどその頃、タイガのポケットの中で、通知のライトがそっと点灯したが、ポケットの中に入れたままのタイガはそれに気がつくことはなくーー
それがなまえからのメッセージだと気付くのは、夕飯も食べ終わった後になるのだった。